「葬祭ディレクターの独り言」は葬儀のあれこれを紹介します。

私は求人広告業界から葬儀業界に飛び込んだので学生の時から専門知識を付けたり…という事は当然ありません。父親の葬儀とか知り合いの葬儀に参列した経験位ですね。

とにかく葬儀のプロフェッショナルを育成するというのは高齢化社会が進んでいく中で大変意味のあることだと思います。

さて、この専門学校の生徒が考えた卒業制作発表に関する面白い？記事を発見しました。

※以下「神奈川新聞　2015/2/20」記事より…

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神奈川唯一の葬儀専門学校、日本ヒューマンセレモニー専門学校（平塚市八重咲町）で１４日、同校生徒の卒業制作発表会が行われた。

　「世界に一つだけのエンディングプラン」をテーマに今春卒業する生徒３０人が、５チームに分かれ、「常識にとらわれない」「実社会ではまずできない」祭壇や式次第のアイデアを競った。

　父が好きだったパチンコを告別式のテーマに設定。実物の台や造花のスタンドをメーカーからレンタルして、パチンコ店で故人が過ごした時間を再現したパチ ンコ葬。ワルの悪友を賑やかに見送ろうとエンバーミング（長期保存用の死体防腐処理）された遺体を胴上げして納棺する胴上げ葬など様々な葬儀が発表され た。

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で、動画を張り付けてみました。

全部見たのですが、私個人としてはかなり引っかかることがありましたので、ちょっと考えを述べさせてもらいます。

気になったのは「パチンコ葬」と「ワルの悪友を見送る」の二つです。

まずはじめに私は「葬儀」とは故人様とそのご家族が主役だと考えております。そのうえで…

「パチンコ葬」に関しては故人様の好きなパチンコで見送る…との事ですが、いくらパチンコが好きだったと言ってもそれが故人様にとって本当にうれしい事なのか…まぁ嬉しいのかもしれませんね。

しかし、ご家族にとってはどうでしょう？

基本的にパチンコは実質ギャンブルであり、社会的にはあまり良いものとされてはいません。家族にとっても良いイメージのものではないはずです。また、疎遠の親族が参列した際、パチンコ葬を施工した親族に対してどう感じるでしょうか。

想像は容易に出来ます。やはり反感はあるでしょう。親族内で不協和音も起こるかもしれません。当然故人はそんなことを望まないはずです。

また、いくら大切な方がなくなり、冷静な判断が難しいご家族でも（いや、だからこそ）、パチンコが好きだと知った葬儀屋からこんな案を出されたら戸惑うでしょうし、企画提案段階で通る事はほぼないと考えます。※もちろん可能性はゼロではありませんが。

「ワルの悪友を見送る」に関しては、もはや家族の存在そのものが考えの根っこから消えているように感じます。

動画のイメージから若い男性が亡くなったという前提で考えれば、喪主は父親であり母親であると考えます。とすれば当然葬儀の打合せや施工も両親が行います。

まずそこに「ワルの悪友」なるものが入ってくる余地があるでしょうか？仮に大挙して入ってきたとしてどこまで要望を受け入れるでしょうか？間に入る葬儀社としてはそちらの意見を優先的に取り入れるなんて事はまずしません。

故人の友人以外は不快な想いしかしないでしょう。

また肝心の故人は喜ぶのか…ですが、友人が来てくれることは当然嬉しい事のはずです。ただ、遺体となった自分に、胴上げの為だけに、行う必要のないエンバーミングという大手術をし、不良の格好をして椅子に座らせられる…

私だったら嫌です。辱めを受けているようにしか思えませんし、友人の自己満足の為に利用されていると考えてしまいます。

どちらの案も発想は面白くて嫌いではありませんが…

1、故人が本当の意味で喜ぶのかが抜けている
2、家族やその他親族への配慮に欠けている
3、過程の中で実現可能であるかどうかが無視されている

…と感じました。

まぁ私も大学時代ろくに勉強していなかったので偉そうな事は言えませんし、私が知らないような専門的な知識を学生の皆さんは知っているのかもしれません。

ただ、「明るいお葬式」自体も今までにない変わったコンテンツを導入していますが、最低限実現可能か、葬家に嫌な思いをさせずに行えるかは最低限のボーダーラインにしています。

葬儀業界で働く以上は故人の気持ち、そしてご家族の気持ちになって考え、その葬儀が実現可能かどうかを現場の立場にたって考えていくことが必要ではないでしょうか。

https://www.youtube.com/watch?v=2R3YOfhULo4

https://www.youtube.com/watch?v=ZYj1fc_CdbU